生産現場の皆様なら良くご存じのトキソプラズマ症。
ヒトへも感染し、先天性トキソプラズマ症を引き起こす人獣共通感染症です。
とりわけ、豚肉からヒトへの感染が問題視される原虫感染症ですが、生産者方々の努力によって飼養衛生レベルを向上したお陰もあり、今では畜産経営上大きな問題として捉えられなくなっています。ヒトでの本症の大規模調査も30年以上前に実施されましたが、それ以降詳しい感染動態を調査したものはほとんどないと言って良いと思います。
その一方で、家畜や野生動物におけるトキソプラズマ抗体の保有率については、ここ10年間だけでも数多くの調査報告を知ることができます。それによると、食肉処理場の調査で豚は5~10%、牛においても2~5%の抗体陽性率が確認されています。野生動物ともなると、ニホンカモシカで24%やアライグマで16%、イノシシで6%といった具合に、かなりの個体でトキソプラズマ抗体が陽性と検出されています。
豚の令和2年度の食肉処理頭数は、約1,700万頭です(農水省畜産物流通統計)。仮にそのうちの10%が陽性だとすると、実に170万頭がトキソプラズマ抗体陽性ということになります。この数字がそのままイコール枝肉内に感染性シストを保有しているか?とは言えませんが、公衆衛生上無視はできない数字ではないでしょうか?
これらの学術的調査知見から、本当に“過去の病気”として考えて良いのか疑問です。
いや、それ以上に、豚だけでなく牛も含めて“サイレント感染”状態になっていると思います。
ジビエ料理や生食なども拡がるグルメブームもあり、いま一度、トキソプラズマ症の危険性を再確認する必要があると、我々は強く考えております。
弊社では、これまでのトキソプラズマ抗体検出法と比較して、より高感度で特異性の高い抗体検査系を開発しております。この機会に、しっかりとしたトキソプラズマ感染動態のチェックをお勧めいたしますので、実施をご検討される場合は、是非ともご相談ください。
参考文献
https://www.jstage.jst.go.jp/article/mez/72/1/72_720101/_pdf
https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010910669.pdf
https://www.pref.ehime.jp/h25122/2541/tyousa/documents/toxo.pdf